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September 19, 2005

『宮尾本平家物語』

宮尾本平家物語(全四巻 2,243ページ)、を読み終えました。
一巻(青龍之巻)は赤、二巻(白虎之巻)は緑、三巻(朱雀之巻)は黄、四巻(玄武之巻)は紫の地に、蓮の花が描かれた表紙の装画・装丁、目に鮮やかです。あとがきに「平家物語原本の大きな魅力のひとつには、文章の美しさがありますが、私はそれをなるべく伝えたいと考え、敢えて残しました」とあるように、原文、もしくは原文に近い文章や、古典的な表現が用いられ、それらが現代語と相俟って、宮尾本平家物語ワールドを構築しています。

例えば、有名な那須与一の一文、
「与一鏑をとッてつがひ、よッぴいてひやうどはなつ」(小学館 日本古典文学全集 平家物語 二)は、
「与一は鏑矢をきりきりと番え、ぐーっと引絞ってからひょうと放つ」(宮尾本平家物語 四)
といった具合です。

私が一番好きな巻は、若き日の清盛が、面影の母を慕ったり、出生の秘密に戸惑ったり(白川天皇の御子説をとる)、恋愛をしたり、家長として一門をまとめていったりする一巻。清盛の青春編、とでも言えましょうか。
先にも述べたように、古典と現代文の混ざり合った文体が独特な雰囲気を出しているのですが、特に美しく感じたのは、「二巻 安元の賀」の章、維盛が「青海波」を舞うくだりと、平家一門の人々を花に喩えた「花揃え」。「四巻 名残の管弦」で、都落ちした平家一門が、荒れ果てた福原の邸で管弦の宴を催す場面も、寂々とした中に美しさが漂います。清盛が亡くなる三巻、平家が滅びる四巻は、涙ぐみながら読みました。

『宮尾本 平家物語』を読むと、大河ドラマ『義経』のキャラクター設定がよく理解できます。特に時子は、松坂慶子のイメージそのままに読むことができました。お徳は、一巻から小雀の徳という若い娘で登場し、清盛と若い頃からの顔見知りであったことが分かります。驚きは丹後局で、後白河法皇が鳥羽殿に押し込められた時に、「齢三十に近い成熟した女房」だ、ということ。この時、側にはもう一人年老いた右衛門佐という乳母が仕えており、この二人を足し合わせて妖怪キャラクターになったのかと思われました。
テレビ脚本の遊びが感じられたのは、義経の正妻の名前。『宮尾本』では良子(よしこ)ちゃんなので、萌ちゃんとはディレクターの方の趣味でしょうか。妹の能子(よしこ)と読み方が重なるため、萌ちゃんにしたのでしょうけれど。

読後、久々に大作を読んだ満足感を味わうとともに、これだけの長編を書き上げた後というのは、作者はどのような心境なのかしら、と想像したくなる、そんな作品でした。


参考・引用
『宮尾本 平家物語』一~四巻 宮尾登美子著 朝日新聞社
『日本古典文学全集 平家物語』一、二巻 市古貞次校注・訳 小学館
NHK大河ドラマ公式ホームページ http://www3.nhk.or.jp/taiga/

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Comments

昨日はコメント有難うございました。「宮尾本平家物語」お読みになったんですね。確かに「青海波」、「花揃え」、「名残の管弦」は今回の大河でも絶対に入れなきゃいけないシーンでもないのに、本筋とは別にちゃんと描かれていましたね。脚本家の方も印象に残ったのでしょうか。
 僕はまだ読んでないのでネタばれになると嫌だなぁと思いながらもついこの投稿を読んでしまいましたが、内容にかかわることはほとんどなかったのでよかったです。大河ドラマが終わったら読むということで楽しみにとっておきます。

Posted by: 悪七兵衛景清 | September 19, 2005 at 07:24 PM

>悪七兵衛景清さま

せっかちな私は、大河ドラマの原作を早く読みたくなってしまうのです。ねたバレを気にしながら、お付き合いいただいて、ありがとうございました^^

他の方のブログ等を読んでいると、『宮尾本』は賛否があるらしいです。悪七兵衛景清さんが、どんな感想を持たれるか、楽しみにしています。

Posted by: ヒロ子 | September 19, 2005 at 08:45 PM

コメント有難うございました♪

全て読み終えたんですね♪感服いたします♪

たしかに『宮尾本』には賛否両論があるようで、歴史学者の間でも別れているそうです(事の賛否は置いといて、そのくらい話題性があるともいえますね)♪

九朗様の正妻の名‘萌’は、(これはあくまで私の想像ですが)萌様役の尾野真千子さんが昔、映画「萌の朱雀」で出演していたからでは・・・と思ったりしちゃいました♪

Posted by: ちこりん | September 20, 2005 at 09:47 PM

>ちこりんさま

『宮尾本』、力は入っていると思います。個人的には、平家物語に、大分、忠実なような感じがしました。

「萌の朱雀」、カンヌで賞をとっているのですね。全く知らない作品でした。これまた賛否両論なところが、気になりますね~。

Posted by: ヒロ子 | September 21, 2005 at 09:18 PM

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