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January 04, 2006

『半島を出よ』上・下

圧倒されました、『半島を出よ』(村上龍著)。

①本の厚さ。
②表紙のメタリックな色彩のヤドクガエル。
③登場人物の多さ(上巻135名、下巻90名)。
これだけで、一瞬怯みます。

2010年、北朝鮮軍(高麗遠征軍)に福岡が占拠される
…と聞けば、ありえないようで、ありえるかも、と思える話。

主役は、福岡の倉庫群に住むイシハラグループ。かつて爆破事件などを起こして暴れていたらしい、今は詩人などをしているイシハラと、彼が住まいを提供している、犯罪を犯したり、犯しそうになった少年達の集団。
準主役のイシハラグループが戦う高麗遠征軍の先遣隊コマンド9名は、北朝鮮の特命により、名目上反乱部隊と名乗り、祖国を捨てて、福岡に上陸する精鋭部隊。
他人と上手にコミュニケーションがとれない犯罪に親和性のあるグループと、殺人マシーンのような肉体と精神を持ち、将軍様に忠誠を誓う北朝鮮のテロリストグループという、どちらも共感できないような人達ですが、意外に共感できちゃうのは、さすが村上龍氏の腕前です。

多数の個性的な登場人物が活躍することに加えて、武器や建物の緻密で詳細な描写、政治・経済のエピソードが、現実感を高めます。例えば、アメリカが、アフガニスタン、イラク、イラン、シリアの民主化に失敗し、ドルが急落の後、円が急落。国債と株が暴落し、消費税率が17.5%になる。
北朝鮮のテロに対して、攻撃することも、交渉することもできないまま、日本政府は東京にテロリストが来るというウワサに怯え、九州封鎖を決める。
予想できないこともないワーストな日本の未来像、そこまで日本政府はバカじゃないと信じたい反面、日本の将来は大丈夫なのかという私達庶民のひそかな(?)不安を掻き立てます。
イシハラ曰く「国家というものは必ず少数者を犠牲にして多数派を守るものだ。」

さらにイシハラの言葉「このことだけは何度も言うし、大事なことだから一回しか言わないけど、多数派に入っちゃだめだよ」。
イシハラグループは、住民票を持たない、日本人であって日本人ではない集団。高麗遠征軍も、反乱軍でありながら反乱軍ではない集団。正規ではない集団、少数派が活躍するというのは大衆小説のセオリーかもしれません。少数派であることの大切さを謳う主人公の物語がベストセラーになるということに、「ナンバーワンにならなくてもいい」と歌いながらナンバーワンになりまくったSMAPの『世界に一つだけの花』と同じ矛盾を感じました。

最後に、村上龍氏、『13歳のハローワーク』にしても、『半島を出よ』にしても、ちょっと説教くさくて、年をとったのかしら。キライじゃないですけど。

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Comments

自分は、物語をちょっと広げすぎたかな~、
との印象を受けました。
同じ村上作品では「愛と幻想のファシズム」や
「5分後の世界」も、面白かったですよ。

Posted by: ぽうせ | January 06, 2006 at 03:21 AM

>ぽうせさま

村上作品はあまり読んでいないのですが、
もしかすると村上氏の挑戦作なのでしょうか。
たしかに、言いたいことがいろいろあって、
それを全部詰め込んじゃったら分かりにくくなった、
というところがあるかもしれませんね。
とは言え、私は、けっこうハマりましたが^^;

Posted by: ヒロ子 | January 06, 2006 at 05:12 PM

この本の装丁をした人、かなりの売れっ子さんらしいですヨ。
以前 「情熱大陸」 で取り上げられてて、番組中、この 「半島を出よ」 の装丁を制作する過程がドキュメントされてました。

この作品、確かにレビューを見てると賛否分かれるようですね。
(図書館で) すんごい予約数だったので諦めてたんですが、そろそろ落ち着いてきたかしら?
予約入れてみようかな~★ ^^

Posted by: 桔梗屋 | January 06, 2006 at 06:46 PM

>桔梗屋さま

売れっ子さんなのですか!知りませんでした。
福岡の上空写真の上にカエルが乗っている表紙、シュールでかっこいいのかも。

先日本屋さんに行ったら、
まだベストセラーコーナーにありましたが、
図書館事情はどうなのでしょう?

話題性はありますし、一読の価値はあると思いますが、
面白いかどうか、桔梗屋さんの感想、楽しみにしています^^

Posted by: ヒロ子 | January 06, 2006 at 10:16 PM

面白そうな本ですね♪

「他人と上手にコミュニケーションがとれない」というのは現在の日本を象徴しているなぁ~・・・と感じました。


Posted by: ちこりん | January 07, 2006 at 01:10 AM

>ちこりんさま

現在の日本、現在の世界情勢を象徴し、警鐘をならしているというか、皮肉っているというか、そんな感じです。
なのに、”安保闘争”という言葉が浮かんだりもしました。もちろん、私は、その世代ではないですけど^^;

Posted by: ヒロ子 | January 07, 2006 at 05:40 PM

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