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January 25, 2010

『沈まぬ太陽』山崎豊子著

興味としては、描かれている内容がどの程度事実なのか気になりますが、この小説の魅力は事実か事実と異なるのかという点にあるのではありません。航空会社を中心として、政、官、財を巻き込んだ闘争、スキャンダラスな人間ドラマを、事実に基づきながらも、小説として再構築し詳細に描き上げているところに大きな魅力があるのです。単行本で5冊のボリュームですが、飽きずに一気に読ませる著者山崎豊子氏の迫力ある筆致に圧倒されました。

1961年、物語は主人公恩地元が、国民航空労働組合の委員長に就任したことに始まります。空の安全を守るために、組合員の労働条件の改善を訴え会社側と闘った恩地は、委員長を2期務めた後、パキスタンのカラチ支店に事実上左遷されます。その後、テヘラン、ナイロビと盥回しにされる恩地。その間にも会社は利益優先の経営に走り、結果として連続事故が起こります。衆議院交通安全対策特別委員会で恩地の不当人事が取り上げられ、10年ぶりに帰国した恩地でしたが、与えられたのは名ばかりの”閑離職”だったのでした。
1985年8月12日、国民航空123便が御巣鷹山に墜落。航空史上最大520名の犠牲者を出します。恩地は遺族係として、現場で、またその後の補償交渉で、遺族のお世話にあたるのでした。
地名、便名、そしてご遺族の方が実名で登場し、「御巣鷹山篇」は、フィクションとノン・フィクションのぎりぎりの境界線を辿るように進行します。日航機墜落事故当時、私はまだ子どもでしたが、TV報道で見た場面の断片や当時感じた衝撃を思い出しました。
事故後、国民航空再建のために、経営陣が官邸主導で一新されます。新会長に就任した国見は、『絶対安全』を掲げて組織改革に邁進。組合問題を解決するために、恩地を会長室のメンバーに抜擢します。国見や恩地、そして心ある社員により、会社の上層部の腐敗、政、財、官の癒着が徐々に明るみに出てくるものの、腐敗の根は深く、ついに更迭される国見会長。そして、小説はクライマックスを迎えます。

あとがきの日付は、1999年8月10日。10年を経て、本書で予言されたかのように、日本航空は経営破綻しました。小説の内容が事実か事実ではないかが問題ではありません。多くの社員の方が真摯に仕事に取り組んでおられるだろうことも、想像できます。社員の方がメッセージを配ったところで問題解決にはなりません。私たち利用者が願っているのは、本当の空の安全であり、これまでに利益を貪った、今でも暴利を貪っているかもしれない人々の反省と償いなのですから。



沈まぬ太陽(1(アフリカ篇・上))

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